200人の子どもたちを背負って遍路


     一人の医師
 

細谷亮太さんは、聖路加国際病院の小児科の医師です。
今は副院長でもあります。
7月に、細谷医師の、「子どもの命みつめて」
という放送があります。
NHK・教育TVの「知るを楽しむ 人生の歩き方」に、
登場されます。


テキストを先に読みました。
テキストは、加藤登紀子の「男と女の旅路 6月」と、
7月を合わせて掲載しています。


細谷医師は、治療の甲斐もなくあの世に旅立っていった
子どもたち200人の名簿をリュックに入れて、
四国遍路に出ます。
その話の最後に、次の文章があります。


  「私には耳に残る忘れられない音があります。
  お米を研ぐ音です。
  それは、七歳で白血病を発症、
  十年間も戦い続け、十七歳で亡くなった祐子ちゃんの家でのことでした。
  つらい闘いを重ねてきた祐子ちゃんが、
  ようやく静かな世界にいくのを、
  今か今かと見守っていた夜明け。
  寝ぼけた顔を洗おうと、洗面所に立った私が台所の前を通りかかると、
  音が聞こえてきたのです。
  『ジャッ、ジャッ、ジャッ』
  台所をのぞくと、涙で肩を震わせながら、
  お米を研いでいる祐子ちゃんのお姉さんがいました。
  死にかかっている妹のすぐ脇で、
  生き残り生き続けていくものたちへの食事のしたくをしているのです。
  そして祐子ちゃんが亡くなったあと、
  きれいに炊き上がったご飯でつくられたおにぎりを、
  生き残ったみんなで食べたのです。
  残されたものは、こうして生きていきます。
  さいわい、がん治療はどんどん進化し、
  治って当たり前の時代がやってきつつあります。
  でも、だからこそ、二百人の子どもたちの死を、
  私は忘れないようにしたいと思っています。
  それができなくなったら、
  そして不幸にもサヨナラしなければならないときに
  涙を流せなくなったら、
  私はプロの医師であることをやめるつもりです。」


細谷先生は、子どもの最期を在宅でみとることをやってきました。
ここにコメントを書きません。
この放送は、毎週水曜日の夜の10時25分から放送されます。
再放送は翌週の水曜日午前5次5分からです。
放送を視聴するか、テキストを読むか、
このブログを読まれた方々に、
細谷医師の心を聴いてほしいと思います。