異変が起こっている


      小鳥が来ない


なんだか変だ。
今年の冬はナンテンの赤い実に小鳥が来ず、庭の十本ほどのナンテンは今も赤い実をつけたまま、次第に黒ずんできている。
マンリョウの赤い実も同じく健在だ。
毎年ついばみにきて、正月前には実を食べてしまうヒヨドリも今年は来ない。
村のおちこちの梅が満開で、おとといの嵐が去ったあとの天神さんの脇道に散った花びらは、白ペンキと紅ペンキのしぶきを散らしたかのようだ。
梅は、何の変てつもない地味な樹だが、
花が咲くこの季節だけ、静かに自己をアピールする。
今は村のどこにどんな梅の樹があるのか一目瞭然で、
こんなにも梅の樹があったのかと驚くほど多い。
我が家の庭にも二本の梅がある。
だが、そこにも蜜を吸いにくるメジロの姿がない。
おかしいな、と話していたら、新聞の投書にも似たような意見が出ていた。
今年は小鳥が来ない、という。
そうするとこれは全国的な現象なのか。
ラジオで、山科鳥類研究所の人が、鳥の世界にも少子化が起こっているのではないか、
生まれてくるヒナが少ないのでは、と語っているのを洋子は聞いたという。
今日の朝日新聞の「ひと」の欄に、6万5千羽の野鳥を救出した自然保護団体の人の話が出ていた。
21年前、熊本県で「エコシステム」という自然保護団体を立ち上げた平野虎丸さんは、違法に飼育されているメジロなどを飼い主から救出して自然に返す活動をつづけてきた。
活動のきっかけは、30年ほど前から、野鳥がほとんど捕れなくなり、何十羽ものメジロがひしめき合って枝に止まっている様子から「目白押し」の言葉が生まれたという光景はもう見ることもできないという危機意識だった。


今年、ウグイスの鳴き声は一回聞いた。
メジロはゼロ。
去年の秋は柿の生り年で、あちこちの柿の木は枝もたわわになっていたが、それを食べに来る鳥もいなかったのか、冬になっても木守柿はたくさん残っていた。
近所に柿の大木がある。
毎年冬になると、その年に生まれたスズメがその樹に集まってきて枝にひしめき、夕方から夜にかけて、ちゅんちゅんと騒がしいくらいに鳴きあって、群れで冬を越していた。
その木にも今年、若スズメは集まらなかった。
鳥の姿を見るし、声も聴く。
スズメの群れが電柱に止まっているのも見た。
が、確実に鳥の数は減っている。
この山里、やかましいくらいにさえずっていた鳥が、姿を消している。
何かおかしい。
何か異変が起こっている。