⑤  廃品回収、リサイクル


       リサイクル


よく通る声を響かせながら廃品回収が、
小さな手作りの木の一輪車を押してやってくる。
おばあさんは布袋を背負い、青年は手押し車を押して。
歌うように喉を響かせる声色は、日本の昔の物売りに似て、
聴くたびになつかしさが湧く。
ダンボール、紙製品、ペットボトル、ポリ袋、ビン、カン、
廃品回収によって生活を成り立たせている人たちが多い。
消費社会が急速に進む中国、
リサイクルでもいくらか収入を得ることが出来るのだ。
呼び声が宿舎の下で止まったから、中庭を見下ろすと、
宿舎の隣に住んでいる技工学校の女子生徒たちが、
廃品回収のおじさんの前に、
5、60本のペットボトルやビンを立てて、
交渉していた。
「いくらで買ってくれる?」
おじさんが、金額を提示した。
「そんなのダメ」
女の子たちは、なかなか強い。
「そう言っても、ぼくもお金もうからないよ」
「でも、こんなにたくさんなんだから」
交渉はしばらく続いた。
おじさんが自分の言い値でお金を出しても、
女の子たちは受け取らない。
「しかたない。じゃあ、これだけ出すよ」
とうとうおじさんが譲って交渉は成立。
女の子たちは、満足して引き上げていった。
感心して学校へ行ったら、
なんと、ぼくのクラスの連中も、教室のテレビボックスに、
ペットボトルをたくさん溜めている。
自分達の飲んだもの、そこらで拾ってきたもの、数十本はある。
ある日、授業が終わったとたん、教室に廃品回収のおじさんが入ってきて、
ペットボトルを集めて持って行った。
いくらになったの?
ハンさんに訊くと、十数元になったという。
隣の棟の一階にある閉店した酒店がある。
リフォームして開店するのか業者が入った。
壁や間仕切り材などの要らないのを外の中庭に放り出し、
廃材やボードの不要なのが山になった。
中庭は子どもたちも市民も通るんだよ、困るなあ。
翌朝、廃材のまえに中年の夫婦が荷車を引いてきた。
木ぎれや板を車に乗せ、二人は満足そうに帰っていった。
入れ替わって老人が来て、木材を抱えていった。
酒店の隣は私立の小さな幼稚園、
そこの先生も木材をもらっていった。
次から次へ人が来て、使えそうなのを持っていく。
廃材はどんどん減って、
最後に残ったのは使えそうにないものばかり。