④   暗闇の公園に集う人たち


    公園に集う人たち


十六夜の月が雲間にのぞいている。
月の明かりに照らされた七、八人のおばあさんは
小さな床几に腰をおろして、
円く輪になり、
何をしゃべっているのやら、
外灯もない公園の、
いつもぼくが通る池の横で、彼女達はいつまでもお話をしている。
日本なら、テレビを見ている宵のころ、
家にいるよりここが楽しい、
心が安らぐ。
公園の向こうには、
ダンスをしている百人近いお母さん。
円形を作って反時計回りにステップを踏んでいる。
ダイナミックな踊りかたは、
似ている、似ている、
ぼくのふるさと、大阪河内の、
若者がアレンジした
「マンボ調の河内音頭」の盆踊りにそっくりだ。
母さん達のグループは毎晩ここが踊り場だ。
道路を隔てた西側の、公園中央は円形広場、
五十組ほどの中年男女が、音楽にあわせて華麗な踊り、
毎晩熱く燃えている。
社交ダンスの会場だ。
夜の自習が終わる八時半、
ぼくらは社交ダンスを見て帰る。
27歳のハンさんは、社交ダンスが大得意、いつも心が躍りだす。
パートナーはいないかなあ。
暗がりの中を探しても、若い女性が見つからない。
あるとき、若いきれいな女性、
ひとり、ダンスを眺めていた。
それ、ハンさん、誘って踊れ。
彼はしばらく照れてはいたが、
思い切ってレディに踊りを申し込み、
二人は声を上げて笑いながら踊りだした。
大きな体躯もしなやかな優美な踊り、
ぼくはうっとり眺めていた。
照明もなく外灯もなく、月の出ているときは月明かり、
あとは周りの住宅から漏れてくる灯火だけ。
この賑わいは朝に始まり、
昼間は少し少なくなるが、それでも一日続くのだ。
太極拳に、ダンス、ウォーキング、ジョギング、
犬の散歩に、剣舞、体操、凧揚げ、おしゃべり、
デイトに、昼寝、子どもの遊び場、
毎日仲間と声を交わし、体を動かし、
心を交わして生きている。


 公園の活用には感嘆するばかり。日本は家に閉じこもり、中国は家の外に出て交流する。この違いが、コミュニケーション力の違いとなるのかもしれません。内へ向かう市民と、外へ向かう市民、この違いはすでに現象に現れてきているように思います。
 しかし、中国の若い人たちは、どうなのか。大学の周辺にはたくさんのインターネットカフェが出来ていて、学生で賑わってます。ここは一人一人の世界にいて、他の人や仮想の世界と交信するところです。
 さて、これからの中国、どうなるでしょうか。