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 お向かいのミヨコばあちゃんが老人施設に入って、家は甥っ子とかに譲られ、この二年ほど空き家になっていたが、昨日一日でたたきこわされた。

 十台ほどのトラックが、家財道具などを運び出し、つづいて大型ユンボが、二階の屋根から鉄の手を振り下ろして、ガバンガバンと、柱も何もかも一緒くたに打ち砕いていく。

 庭にあった、大輪の赤い花の咲くバラも、ヒメコブシの樹も、何もかも引っこ抜き、キャタビラで踏みつぶし、大量のガラクタとなってトラックで廃棄物処理場に運ばれていった。

 

 まだまだ住める家も、不動産屋に渡り、新築の土地として売られる。新しい所有者が新しい家を建てる。

 

 ばあちゃんの思い出がよみがえる。

 Y新聞を購読してくれと、菓子などをもってやってきた男二人が、ミヨコばあちゃんに迫っていた。おばあちゃんは、「新聞は読まないから、こらえてくれ」と、ひざまづいて頼んでいた。ぼくは怒りに燃えて、二人に迫り、身の危険を感じたけれど、追い返した。二人のうちの一人は、どうも暴力団のような感じの男だった。

 わが庭の野菜をよく持って行った。おしゃべりも、よくした。

 夜、家の電気が点いていなかったら、どうしているか見に行った。

 ばあちゃんには子どもがいなかった。初めの旦那も、再婚した旦那も、亡くなっていた。飼っていた犬のマミちゃんも亡くなった。

 

 一日中、鳴り響くユンボの音、胃が痛くなった。

 

 ぼくの頭の奥で歌が聞こえた。

 「これが にほんだ‥‥ わたしの くにだ‥‥」