ディン君へおみやげ

 

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 日曜日夜、公民館での日本語教室にやってくるベトナム人ディン君に、我が家で穫れた枝豆、ゴーヤ、ナツメ、トマトを持っていった。

 「枝豆はゆでて、ほんの少し塩を入れて、食べるとおいいしいよ。」

 そう言うと、「ゆでる」という言葉が??? この言葉、彼は初めて出会う。

 「ゆでるというのはね、‥‥」

 説明していると、「ゆでる」と「ゆがく」はどう違うのかなあ、という疑問が僕の頭に湧いてきた。

 「ベトナム語辞典にはどう書いてあるかな。」

 ディン君は、二つの日本語を辞典で調べた。

 「ちょっと書いてあるのが違います。」

 「ふーん、どう違うかなあ。」

 ベトナム語の説明はぼくには分からないから、この二語はどういう時に使うか、使用例で考えてみた。

 湯を沸かして、野菜などを湯だけで煮るのは同じだが、「ゆがく」は、次の過程と関連があるのじゃないか。「ゆがいて、あく抜きをする」とか。

 日本語教室に来ている三人の女性スタッフに質問してみた。

 「意味は同じじゃない?」

 「信州では『ゆがく』は、使わないねえ。」

 

 袋に入ったナツメを見たディン君、

 「この実、ベトナムにもあります。お母さんが持って帰ってきたことがある。なつかしいね。」

 ゴーヤはもちろん、暑い国にはある。

 話題は最近のニュースになった。

 土砂崩れで、ベトナム人技能実習生が二人巻き込まれたこと、一人の遺体が土砂の中から発見されたこともディン君は知っていた。多額の借金を背負って日本に来て、若い命を落とした。死んだ実習生の家族の悲しみはどれほどか。ディン君の表情も深刻だった。