光る放射線を浴び続ける


 海三郎くんから「季論21」春号が送られてきた。新船君、苦労してよくやってるなあ。
 最初のところに写真ページがあるのだが、そこに「光る放射能」と題したフクシマからの映像が載せられている。撮影者は森住卓
 まず1ページ。保育園の庭に落ちていた園児の上履きの光る写真。真っ黒な中に上履きが紫色に浮かび上がっている。足の形をしていて、そのなかに光の粒が点在する。指が当たるところも光っている。2013年2月、浪江町で採取して撮影。
 2ページ。帽子のつば。2013年3月、浪江町での撮影。暗がりの中に緑色に浮かび上がり、小さな異なる大きさの白っぽい光の粒が輝いている。
 3ページ。酪農家の志賀さんが使っていたゴム引きの手袋。これは飯館村で2013年10月採取、とある。真っ黒ななかに白っぽい手形のようなのが浮かび、そのなかにあちこちたくさんの光の粒がある。
 4ページ。道具のヘラとペンチ。ペンチはあちこちに白い光の点がある。ヘラは周辺部分が白く燦然と輝いている。ヘラは浪江町、ペンチは大熊町で採取。 
 5ページ。カエル。両腕両脚を広げた形。頭とお腹のあたりが白っぽく、特に一点、お腹の右側が電気を付けたように明るい。放射性物質を食べた胃袋の辺りだろうか。2014年6月、飯館村で採取して撮影。
 6ページ。コシアブラの幼木と根っこ。飯館村で採取。コシアブラは新芽をてんぷらなどにして食べるとおいしい春の木だ。葉っぱの一点に光の粒。根っこはほとんど全部光っている。
 7ページ。子ども用サッカーボール。浪江町保育園の庭で採取。六角形のサッカーボールの模様に、無数の光の粒つぶが光を放っている。
 8ページ。「絆」の文字を彫った石碑。文字がうっすら白く浮かび上がっている。浪江町、2014年5月。

 撮影者の森住卓氏が書いている。
 「白くキラキラ光る斑点は放射性物質セシウムなどの微粒子が物体に付着し放射線を出している様子だ。目に見えず、音もなく、臭いもなく、味もなく、五感で感じることのできない放射線」を視覚化した。
 森住氏が、人っ子ひとりいなくなった原発の街、双葉町にたどり着いたのは、2011年3月13日午前だった。持っていた放射線計測機は針が振り切れてしまった。
 「チェルノブイリで、セミパラチンスク核実験場で、プルトニウム生産の核工場で、イラクの砂漠などの核汚染地取材で使っていた放射線計測機の針が振り切れてしまう。これほど高線量を出している土地を歩いたことがなかった。」
 放射線計測機があったから危険が分かった。それがなければ無自覚なままにどれほどの被曝をしたか分からない。身の毛がよだったという。
 福島県内の子どもの甲状腺ガンは、疑いも含め160人を越えているが、国も県も公式には原発が原因であるとは言えないという。幼き子どもがそこにいて被曝したとして、そのことを立証しなければ事実はわからないと言われても、どうやってそれが証明できるというのか。
 おかしな世の中になってきた。
 トップがそう言うから、お上が決めたことだから、幹部の指示だから、仕方なくそうする。あっちでも、こっちでも、自分の頭で考え自分の意志で行動することを控える人が増えているのだろうか。不可思議な沈滞が広がっているように思える。ジャーナリズムまでも、政府の意向に沿うようになれば、もう終わり。