雪が生活と都市機能をマヒさせる

 午前中は雪かき・雪捨てで疲れ果て、午後は仕事で片道1時間かけて職場へ行き、行き帰りの車の運転では雪道に気を使い、夕方、帰ってきたらぐったり。夜の日本語教室へは行くつもりだったが、夜の道路事情も加わり、休ませてもらうことにした。事務局を担当してくれている高橋さんに、
 「今日はくたびれて、休ませてもらいます。スウさんが日記を書いて持ってきたら、受け取ってください。明日取りに行きます」
とお頼みした。生徒たちも、やって来るかどうかわからない雪の状況ではある。
 家と職場の往復の道路事情は、まず家を出て10メートル行くと、車輪が堅雪の上で空転、さらに20メートル進むと対向車が来た。道の両サイドは除雪した雪が積みあがっているために対抗できる幅がない。相手がバックして対向できるところで待機してくれた。村の幹線に出ると、道路上の雪はシャーベット状になっているところと、硬く凍結しているところと混在する。これも運転に不安定をもたらす。企業の前の大通りに入ると二車線が通れるようになった。車の幅に雪はほとんど取り除かれ、歩道と車道の間は雪の山。車の台数は少ない。コンビニの駐車場はまだ残雪多く、少ない店員では手が回らないようだ。道路に面した各種の店の社員は忙しい。雪対策まで手を伸ばせないが、せめて客が困らないようにしようと、店の周囲だけ雪を取り除いて、それを歩道の脇に集めている。だから歩く人は大困り。歩道が雪で埋まって歩けないところがある。車道のほうが歩きやすいから、車道の脇を歩いている人がいる。ロングブーツをはいた後姿はご婦人なのか、男性なのか、車との間がわずかばかりで、危険この上ない。はたまた、いったいどういう考えで自転車になんか乗ってきたのだろう。雪の中では自転車は進めない。車道のまんなかでひっくり返っている。たちまち車は停車、後続も一旦停車して自転車が避けるのを待つ。
 松本の市街地に入ると、ただでさえ狭い車道と歩道は、うず高い雪に占拠され、持って行き場所がない雪にあきらめ顔だ。雪かき、雪集めしている人の姿があるにはあるが、組織的なものはなし。行政の対策はどうなっているのだろう。これだけ予想外の雪では対策も通じない。
 学校にくると生徒が学校周囲の雪を先生と一緒に取り除いていた。道路に凍結して付着した雪はなかなか手ごわい。生徒の力で駐車場はよく除雪されていた。
 通勤途中、道路の雪に何度かスリップした。対向車のほうへ前輪がスリップしたときはひやりとした。
 今日の午前中は、雪をかいて田んぼに捨てる作業がハードだった。そして午後の通勤で、雪も帰りも神経を使い、夕方帰宅するとぐったり疲れた。
 6時ごろ、無線放送が入った。明日の月曜日は安曇野市内の小中学校は休校にするという。午前中、PTAの親たちが通学路の雪を除く作業に出たそうだが、それでも安全な通学路を確保できなかったようだ。
 この大雪でよく分かった。積雪70センチか80センチほど、それで社会がマヒする。日本の都市、住宅地の弱点とは何か。二日間、雪が降り続けば、都市がマヒする。高速道路は閉鎖した。電車も運休。除雪車が足りず、一般道路の除雪が間に合わない。雪の捨て場がない。車は動けない。歩行も自由にできない。土曜日の新聞は来なかった。
 市街地の雪の状況を見ると、まったく道路がお粗末だということが分かる。車道も歩道も、あまりに狭く、一時雪を置いておける余裕スペースが全くない。歩道のない道路が圧倒的である。
 無駄のように見えて、このようなときに効果を発揮する、幅の広い歩道、ゆとりのある自由空間を未来に向けてつくっておこうというビジョンを持たなかった行政の実態が、災害の度に明らかになる。