冬の仕事


 安曇野に引越しをしてきたときに、庭にスモモの木を植えた。違う種類を2本植えたほうが実ができると聞いて2本植えた。木は育ち、冬に剪定もして枝を整え、これなら相当実ができそうな大きさになった。春には花も咲き、子房がふくらんだ。ところがこの5年、そこからがダメになる。子房が落下し、いっこうに結実しないのだ。これまでに3、4個できた年があっただけで、ゼロの年がほとんどだ。二つの種類の花の咲く時が少しずれているのが結実しない原因なのか、花粉を運ぶミツバチや花アブが少なくなったから授粉しないのか。八幡神社の近くにプラムの木がある。荒れた空き地に放置されているスモモだ。その木に花が咲いたとき、花粉をもらってきて、授粉してみた。すると、3、4個の実がなった。でも、それがもらってきた花による実だったかどうかは証明できない。
 昨年、その荒れ地に放置されているスモモの木にたくさん実がなっていた。やせこけたこんなプラムの木も授粉して実をつけている。けれども我が家の木は1個。そうすると、ハチやアブが来ないということでもないだろう。
 授粉に欠陥があるかもしれないから、もう1本植えてみようか、そう思って、別のもう一種の苗を植えた。この3種類の3本は、2mほどの間隔をあけて植えた。
 一昨日、スモモの剪定をした。東の端の一本は、枝を勢いよく伸ばす、いわゆる徒長枝が盛んで、花芽が極端に少ない。昨年もそうだった。これは今年も実はダメかもしれない。真ん中の木は、小枝が多く、花芽もたくさんつけている。3本目の新しい木に花が咲き、それが授粉すれば実が出来るかもしれない。3本目は昨年植えたものだから、やっと枝を伸ばしてきたところだが、花はいくらか咲くだろう。先の2本の生長の違いや、花芽の差は、何が原因だろうか。土の状態なのか。わずか2mほどの位置の違いであっても、果樹の環境の何かが異なっているのだろう。この冬の間に、土づくりをしてみよう。
 剪定では、1本の梅の剪定もしなければならない。
 冬のこれからの仕事は、黒豆のあとの土づくりと畝たてだ。小型耕運機は、安曇野に移住して来たとき提供してしまったので、備中鍬とスコップで耕す。ざっくざっく、疲れもするが運動にもなる。備中鍬を十数回振り下ろすと息切れがする。若いときのように行かない。息切れがしたら手を休めて息を継ぐ。一本の畝たてで何回も小休止する。寄る年波のせいで、心臓の鼓動も速くなる。無理はしない。休み休みでも続ければ、いつのまにか畝が何本も立ち上がっている。有機肥料も入れて、鍬でならし、春に備える冬の仕事だ。
 「畑に行ってネギを取ってきて」と家内から声がかかった。スコップを持って自転車で行く。最近畑の土は、半凍土だ。ネギは松本一本ネギと下仁田ネギ、この二種類は白根が深く土の中にある。凍土を砕くように足でスコップを踏んで深く突き刺す。土の表面は凍って固まっているが、中は柔らかい。ごぼっと塊で土はネギを抱えている。ネギの白根は太く、煮ると甘くておいしい。すき焼き、煮物、炒め物に最高だ。
 庭のブラックベリーを半分除去した。ブラックベリーの出来がよくないし、ブラックベリージャムももうひとつだったので、代わりにブルーベリーを植えようと思う。苗床の土づくりは木のチップとピートモスをたっぷり入れる予定。
 昨年彰久さんに種豆をいただいて作った黒豆、秋にたくさん収穫できたので、お客さんや友人にもおすそ分けできた。正月の煮豆にお味噌もできた。うれしいのはぼくの好物、おやつの炒り豆だ。いつも袋に入れてテーブルに置いてある。これをポリポリ、食べたくなったら口に入れている。素朴な甘さ、おいしさ。フライパンでの炒り加減が最初浅かったから生っぽかった。パチパチと音がして、黒豆の皮がはじけるぐらい、香ばしい香りがしてくるぐらい深めに炒るのがおいしい。今年も黒豆たくさん作りたい。