チェンジ、改革


オバマ氏が叫んだ「チェンジ」。
「チェンジ」、この一言にオバマ氏は万感の思いをこめただろう。
「チェンジ」するには、どこかでだれかと衝突する可能性がある。
衝突・対立を解決して、前進するには、それをなしとげるための計り知れない知恵と行動を必要とする。


藤原和博氏が2002年4月に和田中学校の校長に民間から就任して1年半で、80を超える改善を行ない、
その後3年の任期の間に数々の変革、創造をやりとげた。
では藤原氏が去った後、どうなる? 
その疑問に対して、藤原氏はこう書いた。


「和田中の改革に参画して、いま『地域本部』で行動してくれている大人たちには、
もはやこの疑問はないだろう。
自分たちが、この改革の成果を引き継ぎ、
さらに発展させる『和田中文化の継承者』だという明確な意識が芽生えているからだ。
図書館の改造と運営も、
土曜日寺子屋の立ち上げと運営も、
学校全体の緑化と校庭の芝生のメンテナンスを預かる『グリーンキーパーズ』の活動も、
車の分解スペシャル企画も、
壁画アート企画も、
みんな学校行事ではなく『地域本部』の仕事なのだ。
そのために100人を超すサポーターが常時和田中の経営を支えてくれている。
学校の中にコミュニティの核として『地域本部』がある学校、
地域の実質的な主体がある学校、
それが和田中学校だ。」


就任1年半でこう書いた。
改革は、教育実践、授業の中にも数々現われている。


「江戸期の寺子屋に似て、現実の世界に調和したコミュニティスクールになる」
と藤原校長が述べた改革。
わずか数年の任期で、こういう改革をやり遂げることができたのはなぜか。


学校という世界には、前例主義がのさばっている。
藤原氏は、それを排除すれば改革が進むと考えた。
ではどうすれば前例主義を超えられるか。
そこにリーダーシップのあり方が重要になる。


「チェンジ」しようと思えば、反対の考えや別の主張とぶつかることになる。
新たな仕事になれば、労働強化ではないかという意見が出てくるし、
思想がからめば、それを拒否したい考えも出てくる。
「チェンジ」は上から下へのやり方では成功しない。
率先して新たなチャレンジへの行動と態度を示さなければならない。
話しあい、語りかけ、議論し、夢を生み、共に歩む人を作り出す、
そこから始めなければならない。


フランスの「子どもたちが審査員となる文学賞」、高校生ゴンクール賞に並ぶ、クロノス賞とアンコリュプティブル賞も、
夢を画いた人によって始められた小さな運動だった。
それがフランス全体に大きな影響を与える文学運動、読書運動になった。
クロノス賞の審査を担うのは、幼稚園児から高齢者まであらゆる世代になる。
1996年に二人の女性からスタートした賞は、今では14カ国の外国からの参加者も含める大規模なものになった。
これは「老い」をテーマにした作品に与えられる文学賞だ。
子どもたちにとって、おじいちゃん、おばあちゃんが描かれた絵本を含めた文学が対象となっている。
アンコリュプティブル賞は、テーマに制限はなく、この発祥は南フランスの人口14万人の都市の書店主が子どもと本との出会いを広げたいと考え文学賞を思いついた。
1988年に始まり、参加者ははじめは数百人だったが、今では海外にもひろがる画期的な文学賞になっている。


停滞する学校や地域、社会に、新しい風を起こす。
子どもたちが主体になり、多くの社会人がかかわった活動。
「チェンジ」は、それをもたらす。
頑迷な保身者、狭い保守主義者、事なかれ主義者、セクト主義者の壁にとざされない実践になる。