力なき者たちの力

 

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 政治家は大衆に向かって平然とウソをつく。ウソはウソでなく、方便だと思っている。

 世界の強国、大国のつくウソは、自国を統治するとともに、他国を味方につけ他国に影響を与え、他国を支配下に置くためのウソ。

 

 強国に武力で抑圧されてきたチェコのハヴェルが、1989年、大統領になったとき、国民にあいさつした。

 

 「親愛なる市民の皆さん。皆さんは四十年間、同じことを聞かされてきました。我々の国は発展している、我々は幸福であり、政府を信じ、すばらしい未来が待っている、そう聞かされてきました。

 みなさんが私に、大統領になるように提案したのは、私にもウソをつくように、ということではなかったと信じます。――我が国は、繫栄していません。」

 

 ハヴェルが最初にしたことは、ウソをつかないということだった。我が国は、繫栄していません、正直そのもの、冷厳たる事実だった。

 ハヴェルを推し、強国の鎖を絶って、ビロード革命をなしとげたのは、無名の学生たちだった。

 ハヴェルは書いた。

 自分がいかに無意味で無力であったとしても、世界を変えることができる、その力を我々誰もが心に秘めている。「力なき者たちの力」だ。

 もともとハヴェルは戯曲家だった。戯曲家が大統領になった。