この国のゆく道

 平成25年9月15日現在の総務省の発表では、65歳以上の高齢者人口は3186万人(推計)で、総人口に占める割合は25.0%、4人に1人が高齢者だ。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、20年後の平成47年には33.4%となり、3人に1人が高齢者になると見込まれている。
 どえらい時代が到来しつつある。


 「この国はどこで間違えたのか 沖縄と福島から見えた日本」(徳間書店)という本がある。「沖縄タイムズ」が特集した「国策を問う」という連載があり、そこに登場した学者、ジャーナリスト、ノンフィクション作家たち8人の人たちとの対談を加筆修正した記録である。
 その中の一人、千葉大学教授の広井良典(科学哲学専攻)が、こんなことを語っている。


 「これまでは、経済や資本主義は土地や場所を飛び越えて発展するという考え方でしたが、現在はむしろ逆の流れが生まれている。人間は生まれ育った土地、あるいは生まれ育った土地でなくても愛着のある土地や場所へのこだわりがある。コミュニティというのは最終的には、今生きている人だけではなく、死んでいる人も含むものだと思っています。土地や場所というのは、単に物理的なものではなく、個人レベルの、世代を超えた死者をも含む『つながり』が背景にある。私は『自然』の下にカッコつきで『スピリチュアリティ』という言葉を入れることがあります。自然というのは、物質的な意味の自然というよりも、『魂』なども含んだ、その土地の精神性がにじんだものであると、そういう意識が再評価されている時代だと思います。
 成長の時代は、自然をいかに搾取するかの論理で開発した。しかしこれからは人と人との関係性を重視し、人そのものが全面に出る時代です。ミナマタ、フクシマが日本で起こり、自殺者が年間3万人を越える。これだけ無理をしてきた国が矛盾を抱えないはずがない。2050年には人口は1億人を切って、2100年には、5千万人を切る可能性があります。勾配をのぼりつめたジェットコースターが一気に下降していく極点にある。まさに今は山の頂上で矛盾が大きく噴き出している時期です。
 しかし、私は日本社会にはむしろポジティブな可能性があり、もうちょっと自然な姿に、ゆとりある姿に戻していくチャンスなんではないかと思います。私はあえて、人口減少時代の希望ということを言いたいです。」

 ぼくの目には、このジェットコースターが弾き飛ばしてきた貧困と孤立無援の人たちが見える。超高齢化社会になり、やがて人口が急激に減少していくということは、死者がこれから急激に増えるということでもある。ここ10年の自殺者は三十万人。その人たちの魂はどこへ行ったか。これから死を迎える人たちはどのように葬られ、その魂はどこに行くのか。成長神話が築いてきた繁栄の人工物、都市も道路も新幹線も、軍事も原発も、巨大災害に遭遇すればどうなるか。戦争という事態になればなおさらどうなる。
 祀られざる者の浮遊する魂を想像する。政治、経済、文化のありようを考えねばならないと思う。