ムクゲの花、クヌギの苗木


窓を開けると、ヤマボウシの枝の下に一むら、ピンクのムクゲの花が咲いている。
玄関を開け放つと、そこにもピンクのムクゲの花が開いている。
ムクゲは毎日何本かの小枝に、
1個ないし2個の花を咲かせる。
どの小枝の先端にもつぼみを3個から5個つけて。

ぼくは、室内から外の、
日の光に輝く花を見る。
窓や引き戸の四角の枠内に、ムクゲの木はすっぽりとおさまり、
少年のようなムクゲの木は一幅の絵になっている。
今年初めて咲いた花。
初秋の庭に、
安らぎと喜びをもたらしてくれる花。
たくましく、きまじめに。
どこかから飛んできた種から、芽を出した木。
それを移植した木。
ムクゲをそこに、
室内からストレートに見えるその場所に、
植えてよかった。
こんなに愛すべき花とは思いもしなかった。


庭にはニラも咲いている。
ニラは、ぴんと直立して、
無数に勢ぞろいした茎の先端に白い花を
整然と咲かせている。


花が贈ってくれる幸せ。


散歩するいつもの道の途中、
小さなクヌギの林、
去年かおととし、木から落ちたドングリが芽を出した。
数えてみたら、小さな木の苗は7、8本はある。
この幼ない樹、このままここにあっても、いずれ刈られるか、
あるいは、除草剤でやられるか、
そうなるまえに、大きな希望の木に育てたい。


スコップとツルハシをもっていって、
小さな苗木を掘った。
石ころだらけの土に、ツルハシはがちがちと音を立てた。
堅い土を掘った。


公園に植えよう、
夏の子どもたちが、
この木にやってくるクワガタやカブトムシが楽しみになるように。


掘り上げた6本を持って帰った。
苗木が根を伸ばし、公園に移植できるまで、我が家の庭の日陰で養生しよう。
来年、しっかり根づいたら、公園のどこかに
植えよう。