[健康]破壊的感情からの立ち直り



破壊的感情に襲われ、それを制御できなかったら、破壊的行為が他者に向かったり、
自分に向かったりする。
自分に向かうと、自傷行為や自殺をはかったり、精神を病んだりもする。
立ち直りの早い人と、遅い人がいて、
立ち直り、すなわち回復の早い人は、問題を起こすことなく平静な状態にもどることができる。


「なぜ人間は破壊的感情を持つのか」(ダニエル・ゴールマン ダライ・ラマ)のなかで、
その研究の結果が議論されている。


つらい出来事からの立ち直り、すぐに平静な状態に戻れる人は、
前前頭皮質(肯定的感情に重要な領域)で、より活発な活動を示す。
この人々は、前向きで、生き生きとした、夢中になれる生活を送っている。
自発的に感情を制御し、
怒りや恐れの感情を抑えるように言われても、うまくやってのける。
立ち直りの早い人は、またストレスに重要な影響を持つコルチゾールの量も少ない値を示す。
コルチゾールは副腎から分泌されるホルモンで、肝臓にたまるが、脳によって支配されている。
ストレスに見舞われると、ほとんどの人はコルチゾールを分泌させるが、立ち直りの早い人は概してその値が低い。
コルチゾールが長時間、高レベルで分泌されると、脳の海馬内の細胞が破壊される。
それは、外傷後ストレス障害や、ひどいうつ状態の症状で証明されている。
立ち直りの早い人は、かなりの割合で、免疫機能もすぐれている。
ガン細胞から風邪まで、体内に侵入したあらゆる種類の異種抗原と戦う免疫システムのプライマリー・ディフェンスである。


今朝、NHK俳句で、俳人稲畑汀子追憶の映像が出た。
夫が亡くなった後、稲畑汀子は深い悲しみに沈んでいた。
夏の終わりに夫が亡くなり、その冬1月、
鶴を見に行こうと誘われ、
出かけた。
鶴は空を群舞していた。
空が暗くなるほどだった。
それをみた稲畑汀子の心の中から、悲しみはすーっと消えていった。
そして、この句ができた。


    空といふ自由
    鶴舞い止まざるは


鶴が舞いやまないのは、
あの自由な空があるからだ。
「空という自由」
それを感じた時、
悲しみにとらえられていた自分の心が自由になった。


今朝まだ暗かった。
もうひとつの映像、NHK「心の時代」。
自死をはかった母親の話。
1歳数カ月の子が、夜、母が寝込んでいる間に冷たくなっていた。
命はよみがえらなかった。
母親は自分を責め、悔み、自死を図った。
幸いに死なず、未遂で目覚めた病院のベッド脇に、亡くなった子どもの上の子がいた。
小学生だったその子は、
「お母さん、死なないで」
と泣いていた。
それを見た母は、自分は自分を見失っていたことに気づき、我に返った。
上の子のことも、夫のことも、考えられず、
ただただ悲しみの中、自己を失っていたことに気づいたのだった。



医学博士・帯津良一医師が、オーストラリアの実践を書いている。
ガン治療のサポートセンターの話。
主宰者のゴウラーさんは、25歳の時に骨肉腫にかかり片足を切断した。
その直後、肺と骨に再発した。
かれはどうしたか。
瞑想と食餌療法で、ガンを克服したのだ。
瞑想は、チベットに伝わるもっとも簡単なものを実践した。
毎日3時間半。
ゴウラーさんの言うには、
瞑想や食餌療法もよかったが、本当に効いたのは自分の霊性に目覚めたことだ、と。
「いのち」を見つめる、それによって霊性に目覚めたのだという。
そうして彼は、癒しのプログラムを実践するサポートセンターを作った。
プログラムの柱は、食餌療法、瞑想、ディスカッションの三つ。
患者だけでなく、その家族も加わってプログラムをこなしている。
グループディスカッション、これはグループカウンセリングでもあろうか。


心、感情、それと身体は密接につながっている。
心を見つめる、心をひらく、人の心と交流する、
心の実践が重要になっている。
瞑想とは?このテーマが大きく存在する。

      「魂の癒し 身体の癒し」(帯津良一 海竜社)