こんな学校もある

       <創造的実践>


 安曇野の古い蔵と松の古木



最近、二つの教育実践についての投書に出会った。
一つはこんな投書。


山形県東根市の」小学校の敷地内に、樹齢1500年以上の大ケヤキがあり、
その木の下で野外授業が行なわれていた。
それを見た人の投書だった。


 「ちょうどケヤキの下で、先生が50人ほどの児童を集めて野外授業をしていた。
ケヤキの生い立ちや、それを大切に守っていくべきことを話しており、
私も大ケヤキを見上げながら先生の説明を拝聴させていただいた。
 感銘を受けたのは、20センチほどの苗木の鉢を先生が持ちながら、
その苗木が大ケヤキから育った苗であることを紹介し、
同じように育てた苗を、同校が、修学旅行の際、日本の公害の原点とも言われる栃木県の足尾銅山周辺の山々に植林しているという話だった。
 ほおに当たる風が大ケヤキの葉を揺るがすなか、
『この神々しいほど存在感のある巨樹の子どもたちが、足尾の山々で育っているのか』
と思うと、うれしくなり、こうしたすばらしい授業がいつまでも続いてほしいと切に感じた。」


投書の主は、栃木県の46歳の地方公務員とある。
二つ目の投書は、長野県根羽村の中学校校長(59歳)からのもの。


 「根羽中学校では、村主催の夏休みシンガポール研修旅行が恒例になっている。
今年で13回目になる。
 交流している現地の中学校の資料館には、植民地時代のイギリス国旗、太平洋戦争で日本に占領された時期の日の丸、
そして、現在に至るまでの7本の旗が展示されている。
シンガポ−ルの人びとが独立を勝ち取るために、どれほどの努力を重ねてきたか一目で分かるようになっている。
 空港に近いチャンギ刑務所では、旧日本軍による悲惨な統治の実態を知ることになる。
 一昨年は『ひどいことをしたんだね』とつぶやく私に、生徒たちは
『ぼくたちが新しい歴史を作ります』
と胸を張った。
未来への希望を感じることができてうれしかった。
 今年も中学2年の8人全員が23日、4泊5日の旅に出発する。
未来は彼らに任せるしかない。
研修旅行を通して歴史を学び、未来への平和の大道を築いてほしい。
安穏な道ではないが、強い心で困難に立ち向かうことを願うばかりだ。」


こういう実践をしている学校があることを知ってうれしかった。
まだまだ希望がある。
お上を気にして、出世に影響がないように、保身にうつつをぬかしている教師、
批判を恐れ、つつかれぬように、創造的な実践から逃げている教師、
しんどいことは避け、できるだけ手抜きをしようとする教師、
そういう人たちをたくさん見てきた。
このような教師が多数をしめている学校からは、上記のような実践は芽生えることがない。
こういう実践を目の色を変えて、押さえ込みにかかる教育委員会や行政の強いところからも芽生えない。
今は、無難にやることだ、アイデアを出しても通るはずがないと、初めから悲観的に考えチャレンジを避ける傾向も強い。
志、理念、目的意識を失ったところに、児童生徒の心を打つ実践、人間形成に働きかける教育は生まれない。
もし現場が不毛であるなら、今やることは、志をもつ教師が、孤立していないで、同志を集めることだと思う。
同志が集まり、自主的な研究会を作り、実践を話し合う場を作ることだと思う。
何がやれるか、小さな実践からでも生み出していくことだと思う。