お食い初め

michimasa19372008-11-22





強い元気な歯になりますように。
谷川の河原からもらってきた白い小石に、
お箸の先をちょんと付けて、
それから、お赤飯のごはんをひと粒、お箸につまみ、
アヤちゃんの小さな口に、そっとくっつける。
強い歯が生えますように。
元気に育ちますように。
アヤちゃんの口が動いて、
初めてのごはんのひと粒が口の中にはいっていった。
食べたよ、食べたよ。


その日の午後、谷川に行って、河原を歩いて見つけてきた丸い小石、
小石は三つ、テーブルに置かれ、
お赤飯が、おわんにちょこんと盛られて、
アヤちゃんのお食い初め式。
じいじのぼくがお箸を持って、祈りを込める。
この石のように、強い歯が生えますように。


家族が見守り、
家族が祈る。
初めてごはんを食べる祝い事。
育ちの儀式は、育ちを祈る家族のこころ。


人の一生、節目節目に儀式がある。
卒園式、入学式、卒業式、成人式、結婚式、
そして人生の終わりは葬式、告別式。
儀式はこころを込めるもの。
願いを込め、祈りを込め、決意を込め、夢を込める。
いつのころからか、
育ちの儀式が形骸化して、
次第に消えていった。


かつて、子どもが大人になるときの儀式は、
子どもを大人社会に迎える、重要な通過儀礼だった。 
それを経て、共同体は新成人を成員に迎えた。
大人社会に入るための体験と学びがその儀式だった。
ネイティブアメリカンの伝統は、
男はたったひとりで、聖なる山の頂に行き、女性は村はずれの聖なる小屋で、四日四晩、水も食べ物もないままそこで過す。
「四日四晩、恐怖と対面し、気の遠くなるような孤独と退屈、のどの渇き、飢えに耐えながら、
心の底から自分と自分につらなるものたちのためのヴィジョンを求め、
聖なる世界を見つめて境界を越える。宇宙がすぐ近くにあることをひしひしと感じる。」
(「ネイティブマインド  アメリカインディアンの目で世界を見る」北山耕平 地湧社)


人間の大人になるための、共同体から課せられたスピリットの体験と学びが雲散霧消した文明社会。