5月31日、朝日新聞



         朝の会話


新聞を見た?
今日の朝日新聞、画期的だよ。
アフリカ問題を特集してるんだけど、今日の新聞、どのページもいつもと違うなあ、と思いながら読んでいて、気がついた。
編集は、外国のロック歌手の2人がやったんだって。
一日編集委員だって。
だから今日の新聞は違うんや。
知ってる? ボノという歌手とボブ・ゲルドフという歌手。
へえー、この2人、すごいねえ。
歌手でいて、アフリカの貧困問題やエイズ問題に取り組んできたんだって。
ノーベル平和賞の候補にもたびたび取りざたされてるそうや。

そうか、この前、横浜で開かれた「アフリカ開発会議(TICAD)」、
それがあって、この特集を組んだんやな。
アフリカ開発会議(TICAD)」には、51の国が参加したそうや。
驚いたなあ。ほれ、この1面、村人が自分たちでつくった共同体学校の話。
マリの話やな、南アフリカの。
「質素な土間の小さな教室に、小学1年生49人がひしめき合う」か。
「毎日牛飼いの手伝いもするけど、学校が好き。いろんなことを知ることができるから」と6年生の子が言ってる。
写真は、ケニアのスラムだね。
坂道を駆け上がってくる子の後ろに、スラムの錆びたトタン屋根がくっつくように建っていて、地平線に虹がかかってる。
そうか、この虹、希望を象徴してるんだ。だから、2人はこの写真を選んだんだな。
写真の下に、「アフリカ 21世紀の力」とボノ氏の手書きでイングリッシュが書いてある。


3面に、この2人の長文のメッセージが載ってる。
うーん、2人ともアイルランド人なんや。
日本人へのメッセージ、びっくり、ホットやで。
「対外援助が64年以来最低の水準に落ち込んだ日本に、先進国から途上国への約束を復活させ、
2015年までに極貧を半減するという責務を主導することができるだろうか。
私はできると信じる。
日本は7月のGサミット主催国だから、それができる。
日本はどうすればいいか知っているから、それができる。
日本は近隣地域で何百万人もを貧困から引き上げるという目覚しい成功を収めた。
アジアの新興国の出現に、日本の支援は決定的役割を果たした。
同じ戦略をアフリカに適用すれば、似たような結果が出ないだろうか。」
と書いているよ。
否定的要素より肯定的要素によってエールを送ってるんやな。
こんなことも発言しているよ。
「私は日本が好きだ。自分自身アイルランドという島国出身だ。
島国の人々は海に囲まれて内向きになると思われがちだが、
実は、海の向こうの世界に好奇心を持つ。
世界に対して、自分たちが何者で、
何をもたらすことができるか証明したいと思う。
これこそ、私が日本に吹いていると感じる風だ。
それは、アフリカに向けて吹いている。」
ふーん、ボノ氏の思い入れがあるにしても、
こういうメッセージに出会うと、血が騒ぐね。
日本人が日本人に対して書くメッセージには無いものを感じるなあ。
ボブ・ゲルドフもこんなことを言っているよ。
「沖縄に先進国が集った00年、日本はエイズ患者が置かれた状況を一変させるプログラムを提案した。
『世界エイズ結核マラリア対策基金』だ。
これらのお陰で、08年にはアフリカで約240万人が無償で治療を受けられるようになった。
日本の指導力がなければ、この地球規模の協力は実現しなかった。」
ふーん、そういうことがあったのか。その後に、ボブ氏は言ってる。
「奇妙なことに、この功績に気付いている日本人は本当に少ない。
皆さんの慎み深い気質は知っている。
だが、この善意と寛容に満ちた行いは、特にアフリカの貧しい人々が従来に増して
日本を必要としている今年は、決して忘れられてはならない。
日本経済の苦境は承知している。しかし日本はまだ巨人だ。」
ボブ氏はこう讃えながら、今や日本は援助額では世界で最も見劣りがする国の一つだとちくりと批判しているね。
今、アメリカ、中国、インドという大国が、アフリカに巨大投資をしアフリカ市場をねらっている。
だから、審判役が必要で、その能力と意志があるたった一つの国が日本だと言ってる。
大きな期待だねえ、思わくはあるにしても。
この2人は、自国においても世界においても、具体的な提案と行動を行なってきたから、
こういうことが言えるんだなあ。


ロック歌手が、これだけの行動をする、
お尻がむずむずしてくるなあ。
この2人、アフリカの貧困問題に開眼したのは80年代のエチオピア飢餓が引き金だったって。
世界規模のコンサートを開催して、先進国の若者をアフリカ救済に向けさせたというから、
音楽の力もすごいものだねえ。
今日の新聞、読み応えがあったし、考えるところ大きいよ。
なんだか希望が湧いてくる。
村人が資金と労力を出し合って運営する共同体学校の写真、いいねえ。
黒板に書かれたアルファベットを子どもたちが、木の枝で指しながら順番に読み上げている。