百年前 スペイン風邪のもたらしたもの

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 へえー、そういうことがあったのか。知らなかったなあ。

 今、コロナウイルスの肺炎が世界的な脅威になってきているが、過去には、世界の歴史を変えるような流行性の風邪が猛威をふるい、それが、世界大戦を引き起こす原因にも関係していたのではなかったかという記事を読んだ。

 朝日新聞編集委員の曽我豪氏が、「史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック」(アルフレッド・クロスビー著 みすず書房)を元に書いている、「百年前のパンデミック」という記事。(2月23日)

 百年前、第一次世界大戦の末期、米軍のキャンプで若い兵士が、高熱を発し、極度の衰弱で死んでいった。スペイン風邪(1918年スペインから起きた悪性のインフルエンザ)だった。米軍は、ドイツと戦う英仏側へ援軍を送るも、船の中でも兵士は倒れていく。

 スペイン風邪の死者は、世界では五千万かそれ以上だったという。日本は25万人を超えている。

 第一次世界大戦の当事者国にも伝染病は猛威を振るった。この伝染病が戦争終結を促進した。ドイツ敗北で終戦となり、講和会議ではドイツへの賠償を要求することになる。フランスの世論はドイツに巨額の賠償を求めた。その講和会議にもスペイン風邪が影響した。フランス首相、アメリカ大統領が感染して発病、そして未来を考慮した正常な判断能力を失う。講和の結果は寛容を失い、ドイツへの膨大な賠償要求となった。その結果ドイツでは混迷と憤怒が国に渦巻く。それを利用してナチスが台頭した。そして、第二次世界大戦へと突き進んでいった。

 だいたいそういうストーリィである。

 

 正常な判断を狂わせられる事態は、次々と起きている。

 自然災害が頻発し、人為的なミスが引き起こされる。人間精神はパニックを引き起こし、そして破滅に向かう。

 1923年、関東大震災のさなか、デマが流された。朝鮮人が井戸に毒を投げ込んでいると。このデマにおびえた人々は自警団を組織し、朝鮮人と見ると、次々と虐殺していった。膨大な数の朝鮮人と中国人が殺された。危機になるとデマを流す者がいる。危機の中で正常な精神を失った人はデマを聞いて信じる。そして理性を失い、平気で人を殺す。

 ヘイト本が本屋に蔓延している。ネットにも偏見と憎悪をあおるヘイト記事がはびこっている。

 自然災害が世界でも日本でも猛威を振るっている。人為の災害もきりもなく起きている。

 危機はいつでも起きる。起きた危機が、次の混迷と危機へと人々を誘い、さらなる破滅へと突き進む。