今朝の朝日新聞、声の欄に、「教師をやめたいと思うあなたへ」という見出しの投書が載っていた。元中学校教員の65歳の男性の意見だ。正直な、謙虚な、温かい人間性を感じるその記事を、そのままここに載せる。
「駆け出しの頃、私の授業は私語だらけ。生徒と心通わない日々。生徒に嫌われ、バカにされ、それでも『石の上にも三年』と、自分に言い聞かせた。その三年目、三者面談で、『先生を辞めてください』と生徒に言われたのは、人生最大のショック。こんなこと言われた教師、めったにいるもんじゃない。
担任をしていた生徒の急逝もあった。志望校合格も知らずに‥‥。あの日、初めて生徒の前で泣いた。
行きつ戻りつ、苦労を重ねた。喜びや悔しさで、生徒と涙する行事もあった。授業に独自のスタイルを編み出し、生徒の食いつきがよくなった。
生徒から悩みの相談を持ち掛けられるようになったことも自信になった。こんな不器用な自分でもなんとか頑張って、教師として歩んだ人生がすごくいとおしい。あの時辞めなくて、よかった。
だから、あなたも、もうちょっと、がんばってみないか。」
短いけれど心を打つ投書だ。自分の教員人生を振り返って、若いころは生徒にバカにされながらも、誠実に生徒に共感し、次第に生徒たちから慕われる教員になっていった、その姿がにじみ出ている。教員採用試験に合格し教員になっても、ほんとうの教員になれるものではない。この先生は親や生徒から否定されても逃げずに生徒と共に生きた。
私も中学校教員時代、多くの過ち、挫折の経験をした。そしてまた喜びや誇り、楽しみも数多く味わった。その人生を、私は「夕映えのなかに 上下巻」(本の泉社)に書き残した。長い長い「私の遺言」だ。
教員を途中で辞める人が増えていると聞く。教員の志望者が減っているという。私が今住んでいる地域の中学校に勤めている若い男性教員は、毎日学校を出る時間が午後9時だと言う。午後6時半に部活指導が終わり、それから午後9時まで校務をやって帰宅するのだと。
なぜそうなるのか、解明しなくてはならないと思う。