2億円あれば何をする?

 高速道路・長野道の「豊科インターチェンジ」を「安曇野インターチェンジ」という名称に安曇野市は変えた。そのために2億数千万円の金がかかった。
 この不思議な出来事がすいすい進んでしまった。このことを不思議に思わない市民が多いのか、それとも変だと思っているけれどあきらめているのか、市民の中から目立った動きは何もなかった。市長は、NHKテレビの人気ドラマだった「おひさま」効果で10年間で10億の経済効果がある、と皮算用を言っていたようだ。「そうかいそれならいいじゃねえか、どうぞお任せします」、市民大勢はそんな感じなのか、そこが不思議だ。市長は、アンケートをとったと言うが、ドライブインなどで、「豊科I.Cと安曇野I.Cのどちらがいいですか」とアンケートをとれば、そりゃあ「安曇野I.Cがいいです」と多くの観光客は答えるだろう。名称変更するのにいくら金がかかるかということを抜きにすれば、そう答えるのは分かりきったことだ。二億数千万円かかります、となれば、そこまでしなくてもよいとなる人も多いだろうが。結局、観光客の考えを聞きました、市民の希望を聞きました、形式は踏みました、経済効果に期待しましょうとなった。 
 10億円の経済効果というのはいったい誰がどのように計算したものか、さっぱりわからない。名称を「安曇野」に変えたら観光客が増えると考える、その根拠が分からない。「豊科インター」ではよくないという理由などない。多くの人はどちらでもいいと思っている。車にカーナビゲーションが装置されている時代、観光客が「豊科インター」では分かりにくいなんて考えられない。
 とらぬタヌキの皮算用、それを市議会も賛同した。ここには安曇野の20年後、50年後、100年後を考える、ビジョンがない。思想が感じられない、哲学が見られない。
 観光客を呼び込みたいなら、何度でも来たくなる安曇野にすることだろう。安曇野の魅力とは何か、もっと魅力的なところにするにはどうしたらいいか、訪れたくなる安曇野にするためアイデアをだしあおう、それがいちばん肝心なことだろう。
 市民だけでなく、小学校や、中学校、地元の高校で、児童生徒にその夢や展望を出してもらうこともしなかった。将来の安曇野を構想することこそ、すぐれた教育活動ではないか。子どもたちがこのふるさとの将来を画くことこそ、教育ではないか。
 ここに2億円あります。これを資本にして、安曇野にたくさんの人々が来たくなるような夢を描いてください。
 子どもたちはどんな考えを出すだろうか。市長や市議会の議員では考えられないものが出てくるかもしれない。
 たとえば、たとえば、
 ★ぼくは、JRの駅から、アルプス公園まで、歩く人の道を作ります。そこに並木を植えて、夏でも木陰の道を景色を見ながら歩ける楽しい道にします。安曇野には、どこまでも続く並木道がありません。どこまでも続く歩道がありません。
 ★わたしは、馬車を走らせます。お客さんは馬車に乗って、碌山美術館に行ったり、ワサビ園に行ったりします。駅から馬車道のコースを作ります。
 ★わたしは、広いイングリッシュガーデンのようなバラ園をつくります。そこは散策するだけでも元気になるような、大きな公園です。バラの花が咲き、カフェをつくって、山を見、花を見てくつろぐ、癒やしのスペースです。
 ★ぼくは、屋敷森に住んでいる人を助けたり手伝ったりして、いつまでも屋敷林と安曇野の伝統的な家を残せるようにします。そういう屋敷林をオープンガーデンにしてもらいます。そのほかの人の家も含めて、オープンガーデンに登録してもらい、オープンガーデン歩きができる地図を作ります。
 ★ぼくは、南安曇農業高校の第二農場をもっと広げて、オープン農場にします。農産物の市を開いて生徒の作った農産物を販売し、散策できるようにします。重要文化財になっている円形校舎もオープンにします。
 ★ぼくは、県営の烏川緑地が大好きです。あそこを拡げて、川遊びもできて森の散歩もできて、鳥の声を聴けるところにします。
 ★ぼくは、経済効果と景観に役立つアイデアを出します。広域農道があるでしょう。そこに商業スペースができています。一つは、三郷サラダ市や浜園芸のある商業ゾーンです。二つは、堀金物産センターからベイシアまでのゾーン、三つ目は穂高の綿半からコメリまでのゾーンです。この三つのゾーンを安曇野オアシスにします。そこを整備し、車もサイクリングもウォーキングする人も、そこには立ち寄りたくなります。樹を植え、水場をつくり、公園・広場を備え、花が咲き、おいしいものが食べられる、そういうオアシスです。穂高のワサビ園から白鳥湖周辺も、オアシスとします。「安曇野・緑のオアシス」にするのです。
 ★わたしは、朝市をつくりたいです。土曜日曜でもいいです。だれでも登録したら出店できる朝市です。農産物だけでなく、工芸品手芸品なども出します。
 ★夏に水遊びができる川を作ります。魚釣りもできます。烏川の水を取り込んで、自然の流れにします。川沿いにカブトムシも育つ樹を植え林にします。
 ★ぼくは、大糸線にSLを走らせます。ぼくは機関手になりたいです。松本から白馬まで汽笛が響かせて、シュッシュと走ります。
 
 2億円あれば、おもしろいことができたのになあ。市長さん、議員さん、どうしてみんなと共に考えないのですか。
 選挙で選ばれた人が決定権を持つ。民主主義というけれど、国レベルでも地方レベルでも、それが空洞化していることが問題なのだ。その人たちにどのような思想が、哲学があるのかという問題。