出発の朝に 

michimasa19372009-02-09

             <Nさんへのお返事>

                       シャクナゲのつぼみ

Nさん。
『早春賦』はよい合唱になりましたよ。
彼らにとって初めての文語の歌詞をよくおぼえました。
立春の前から練習を始め、歌詞を説明しているうちに、
この季節と、この時代の状況に、ぴったりだなと思いました。
「春は名のみの風の寒さや、‥‥」
春とはいっても、名ばかりで、風も寒く、谷の鶯は歌いたいと思うけれど、
まだその時ではないと、声もたてない。‥‥
暦の上では春になった。でも、温かい春はまだまだ来ない。


出発していく彼らへの挨拶に、
何を話そうか、と考えました。


逆風が吹きすさび、危機が押し寄せてきているこの時代。
世界に広がる経済危機、仕事のない人が増えている。
経済だけでなく、地球環境の危機も深刻になっている。
中国では、干ばつが進んでいる。
農民はたいへんだ。
食べるものなく、飲む水のない人びとが世界中に増えている。
戦争は相変わらず、今も人が死んでいる。
はたして人類は生きのびられるだろうか。


「日本経済、世界経済が厳しく冷えるこの冬の時代、
あなたがたは来ました。
そこで考えます。
逆風に向かって進もうとすれば、大変です。困難です。
まずは、耐えます。待ちます。
そして互いに助け合うことをやっていきましょう。」


「それから、事実や状況をよく見て、よく考え、知恵を働かすことです。
人間が生み出した危機です。
人間のつくった問題だから、解決できないはずがありません。
人間が解決していかねばなりません。」


「考え方を変えれば解決の道も見えてくることがあります。
たとえば、逆風のときは、方向を変えます。
風に逆らわず、体の向きを変えます。
そうすれば、逆風は順風に変わります。」


考えて、そんな話をしました。


 研修生の「出発の言葉」は、代表の3人が、自分の故郷と家族のことを発表し、
そのあと全員がシュプレヒコールで、決意と挨拶を唱和しました。


「父は42歳です。母は43歳です。どちらも農民です。
母は6時に起きて畑で働きます。たいへん疲れますが、楽しいです。
弟は自動車の会社で働いています。私と弟の趣味はバスケットボールです。
私の家には、犬やハトやニワトリがいます。
ハトは30羽います。
ニワトリは15羽います。
私はヘビが好きです。
私の村には温泉があります。
お金が高いので私は入ったことがありません。
3年後国に帰ったら、恋人と温泉に行きたいです。‥‥」


「私の父も母も農民です。父は毎日お茶を飲みます。タバコを吸います。
母は父に腹を立てているようです。
毎日、タバコを減らしなさいと言います。
でも父はただ笑うだけです。依然としてタバコを吸います。
父は無口です。でも心が善良です。
母は親切な人です。そしてユーモアがあります。
わたしの兄も研修生でした。
でも日本語はあまり上手ではありません。
でも、私に『日本語の勉強はぜひまじめにしなさい』と言います。‥‥」


感動的な出発の言葉となりました。
早春賦の歌の伴奏は、ギターを弾ける研修生がいて(二人の研修生がギターを持ってきていました)、
その1人が伴奏しました。かつてないことでした。
困難はこれからです。
挫折や失敗に出会うことでしょう。
そのとき、人間の力がよい方向に発揮できるかどうか。
冷静に、よい方向に発揮してほしいです。