犬の社会性、人間の社会性

michimasa19372008-12-12







ランは、ゴンチャン、カイちゃん、スズちゃんとは仲がよい。
これまで親しく接触する機会があったから、友だちになっている。
だが、散歩の折、通りがかりに出会って行き過ぎるだけの犬には、興奮する。
近づいて友だちになりたい、という気持ちなのか、対抗心や警戒心でいきり立つのか、
よく分からない。
接触させればいいのだけれど、向こうの飼い主も足を止めないで、さっさと行ってしまいたい様子だから、
いつもランを抑えるのに苦労する。


ランはどうも警戒感が強くなったように思える。
犬は群れの生き物、友だちがほしい。
庭で預かった犬を自由に遊ばせている喫茶店があり、そこで一泊預かってもらったことがある。
家を留守にして出かけたときだった。
その店でも犬を飼っており、連れて行ったら店で両者はばったり出会い、
相手の犬ががぶりとランに咬みついてきた。
店の人はあわてて引き離したが、どうも相性がよくなかったようだった。
一泊二日預かってもらい、翌日夕方引き取りに行って家に帰ると、
ランは鼻の頭と、後ろ足のかかとに怪我をしていた。
どうも咬まれた傷のようだった。
店の人は何も言わなかったなあ、
庭に放されたとき、他の預かり犬に咬まれたのだろうか、
それにしても一言も店の人がいわないというのは‥‥。


それからのようだ、
ランの警戒感が強くなったのは。
神経質になったようにも感じられる。
何回か接触して知り合いになっていると思う犬と出会い、ちょっと飼い主とお話していると、
くんくん鼻で互いにかぎ合っていた二頭に、とつぜん火花が散って、ウーとうなったり、吠えたりすることがあった。
ランの首から背中にかけての毛が、たてがみのように立っている。
困ったもんだ。
もっと友だちを増やしたい。
社会性を身につけたい。
だからドッグランがほしい。
安曇野にドッグランをつくってほしい。
犬の運動場だ。
飼い主たちが愛犬をつれて集まってきて、犬をフェンスに囲まれた運動場に放す。
犬たちは自由に一緒に走り回り、遊ぶ。
こうして犬たちは仲良しを練習し、つながれて生じるストレスを発散し、
それとともに飼い主たちも交流して、仲良くなる。
犬の飼い方や、気持ちを聞くことができれば大いに参考になり、人も育つ。


人間も同じだなあ。
閉じこもっていれば社会性が育たない。
ゲームばかりしている子どもは、仲良しをつくる力が付かない。
コミュニケーション力も育たない。


ぼくの好きなブログダイアリーに、「黄土高原 紅棗がみのる村から」がある。
そこに、何ヶ月か前、こんな記事が出ていた。
書き手は、黄土高原に住んでいる日本人、松本にある高校の中国派遣職員のようだ。
紅棗は、ナツメ。
飼い犬にもナツメという名前をつけた。
日本では放し飼いは禁じられているから、ナツメもリードにつないでいたが、
中国の田舎では犬は放し飼いが多い。
住民に、どうしてつないでいるのかと言われたりして、ナツメも放してみた。


「なつめはもともとものすごく活発な犬で、動くものはアリ一匹ハエ一匹から、クモ、ハト、猫、オートバイ、風に舞うビニール袋まで、なんでも追いかけます。
それでバイクや車にも体当たりでぶつかっていくのでヒヤッとしたことが何回もありました。
子供も走っていれば追いかけるので、一部からは恐がられています。
鶏も追いかけまわして、あやうく噛みそうなときが2回あって、私は平謝りしなければなりませんでした。
そして最近は、羊を追いかける面白さを知ったようで、実はこれが一番困っているのです。
村には羊を飼っている人が数人いて、30頭から5,60頭くらいを毎日2回、高原の耕作地に放牧するわけですが、彼らがどこで草を食んでいるのかはまったくわかりません。
今は収穫が終わったトウモロコシの茎なんかを食べていますが、地形的に遠くからはわからない場合が多く、それをなつめがめざとく見つけてダダーッ!と群れの中に闖入してゆくと、羊たちはもうパニックになって逃げ廻り、それをまた猛烈な砂煙をあげて右に左に追いかけ廻すのです。
噛むことはないと思うのですが、羊飼いのおじさんにはたまったものではありません。
しかし私の犬ということはみな知っているので、手荒なこともできません。
それでなければ、羊の制御棒でぶちのめされても文句がいえないほどの狼藉ぶりなのです。
それから私が見ていないところで、どうやらメス犬に喧嘩をふっかけに行くらしく、その飼い主にぶん殴られていたと、これは大家さんがいっていました。
なぜこんなことになるかというと、なつめの本来の性格もありますが、最大の原因は、やはり繋いで飼っているということでしょう。
当地では極々一部を除いて、生まれたときからずっと放し飼いで、犬は、猫や鶏や羊や人間たちと仲良く共存しているのが当たり前なので、お互い喧嘩もしなければ、好奇心もわかないのです。
逆にいうと、なつめは実に好奇心旺盛で感情が豊かで、
『かわいいね。こんな犬は見たことがないよ』という村人も多いのです。
郷に入ればナントヤラといいますが、やはり当地には当地の犬の飼い方があるようです。
とりあえずは、羊飼いのおじさんたちの写真を撮ってあげて、ごきげんをとっておきましたが、万が一子羊でも噛むようなことがあったら大変だと、一難去ってまた一難です。」
                「黄土高原 紅棗がみのる村から」