詩の玉手箱   滅びに至る人類か 原民喜の詩

 

 

 

主よ、あわれみたまえ、家なき子のクリスマスを

今 家のない子は もはや明日も家はないでしょう

今 家のある子らも 明日は家なき子になるでしょう

あわれな おろかな我らは 身と自らを破滅に導き

破滅の一歩手前で立ち止まることを知りません

明日 ふたたび火は 空より降りそそぎ

明日 ふたたび人は灼(や)かれて 死ぬでしょう

いずこの国も いずこの都市も ことごとく滅びるまで

悲惨は続き 繰り返すでしょう

あわれみたまえ あわれみたまえ 破滅近き日の

その兆しに満ち満てる クリスマスの夜の思いを 

 

 

 これは、原爆に灼かれた原民喜の詩。

 あったこと、ありえたこと、これからもつづくこと、そして終わりが来ること、

 それでも人類はつづける。

 詩は自らに問い、人類に問いつづけている。

 

    碑銘

         原民喜

  遠き日の石に刻み

      砂に影おち

  崩れ墜つ 天地のまなか

  一輪の花の幻