「日日是好読」から

 

 先日、新船海三郎君が送ってきてくれた彼の近著「日日是好読」(本の泉社)を読んでいる。2019年3月から彼が書いてきた気ままな読書の気楽な書評集だ。なんと125冊の感想、書評。よくまあ読んだもんだ。よくまあ書いたもんだ。通勤電車のなかでは、もっぱら読書をしていたという。

 こんな項がある。平井未帆著の「ソ連兵に差し出された娘たち」を読んでの感想。

 1945年日本の敗戦時に旧「満州」で起きた、満蒙開拓団の悲劇、生存者からの聞き書きである。

岐阜から満州に送り出された黒川開拓団は、日本の敗戦とともに中国の元住民の襲撃を受ける。そこへもってソ連軍が進駐してきた。開拓団は中国人の襲撃から逃れるためにソ連軍に助けを求めた。するとソ連兵たちは、略奪をし、さらに日本人女性を凌辱することを始めた。

 団長たちは頭をめぐらせ、未婚の女性たちを選んでソ連兵を“接待”させることにした。約15人がこうして犠牲になった。

しかし悲劇はとどまらなかった。満州人もやってきた。若い娘は本人の知らないところで売られていた。

 かろうじて日本に帰国した開拓民の女性には、新たな苦難が尾を引く。

 「蔑みの目が注がれた。誰もが沈黙してそのような事実に口を閉ざしたが、ふとした折に、汚らわしそうに見る。それによって結婚がかなわなかった者がいる。

団の幹部たちは、集団を守るためにといえば聞こえはいいが、あたかもそれが唯一の方策かのように、性接待を強要したのだ。満州史から生身の女の声が消えていく」。

犠牲者の一人、玲子の言葉。

「団を救うためにと言われても、私はあの時17歳でそういう受けとめ方はできなかった。涙が‥‥血の涙がよう出なかったと思うぐらい泣いた。」

 

  新船海三郎君は次のようにその項をしめくくっている。

 「本書の結びの言葉を紹介したい。これにどう応えるかは、どう生きるか、でもあると思う。

  『言わないとわからない、のではない。私たちの社会が、耳を傾けることを忘れてしまっていたのだ。聞こえる声、聞こえない声を峻別しながら‥‥。』」

 

  かつての日本軍の戦争でも、同じようなことが侵略地で行われた。慰安婦問題はその一つだ。

  今、ロシアによるウクライナ侵略では、何が行われているか。