短歌十二首

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 ウクライナの映像を観て、悲しみ強し。

 かつての、日本の焼け跡を思い出す。

 昭和万葉集講談社)から短歌十二首。

 

 

大き骨は先生ならむ そのそばに小さきあたまの骨あつまれり

                         正田篠枝

 

焼け残る舗道の銀杏(いちょう) 夏されば緑むらがりて幹にふきいづ

                         赤城文治

 

罹災者の骨埋もれてあらむかと 焼けし街路の瓦踏みゆく

                         神田三亀男

 

なにゆえのいくさなりしとつぶやきて 焼けこぼちある路上を歩む

                         遠藤多輔

 

焼け跡にさえぎるものなく風吹けり 妻子を呼びて住まむ日はいつ

                         山根次男

 

蟻ひとつ 焼け残りゐて朝明けし 土より足に這ひのぼり来ぬ

                         隅田葉吉

 

焼けあとの日の暮れ方に人ら住む 壕(ごう)の外にて炊ぐ(かしぐ)火が見ゆ

                         関口登紀

 

わが母を焼きしこの野に よもぎ萌えなづな花咲く春となりにき

                         浅野晃

 

戦に敗れ還りし吾の立つ 野をしきつめてげんげ花咲く

                         角田一

 

焼けレンガ積みてかまどもわが造り ささやけき暮らしここに始まる

                         森田良正

 

うから皆獣の如く思はれて わびしき夜よ ツクシを煮つつ

                         鈴木順

 

このくにの空を飛ぶとき悲しめよ 南へ向かふ雨夜かりがね

                         斎藤茂吉