森を守れない人たち

 

f:id:michimasa1937:20130503153000j:plain

 

  今は亡きCWニコル。ウエールズ出身で、日本に来て長野県の黒姫山の麓に住んで、森づくりをした。

 探検家、小説家、自然保護運動家、ニコルは以前書いていた。

 「私はこの国の自然と文化のもつ美を、私の娘と将来の世代のために残していこうと思う。

 私の生まれたアファンの谷、ウェールズの政府は、アファンの渓谷を再生し、美しい国立公園に変えようとしている。谷の一部に日本の、そして黒姫の森の木々を植えたいと言ってきた。私はこの黒姫に故郷の木々も植えたい。

  勇気を出して声を上げて行こう。子どもたちに教え、人々に忠告し、励ましていこう。わけの分からない人間が目先の利益だけで将来のためにならないことをしようとしたら、まず声をあげたまえ。」

 安曇野市三郷地区、「黒沢洞合(どあい)自然公園」は、黒沢川上流にあり、周囲が自然に囲まれている。

 そこは「三郷地域最後の里山」と言われる公園。
 多くの生き物が生息し、鳥好き、虫好きの人たちが多く訪れる。

 この公園の北側隣接地の森が売られ、太陽光発電施設建設の話が持ち上がったのは昨年。
 今、自然と公園を守れという運動が起きている。
 開発をやめてほしい。だが業者から市へ開発申請が出された。

 公園を守ろうと立ち上がっている人たちは、市長・教育長・都市建設部長と面談し、訴えた。しかし、市行政は
 「自然公園の隣だからといって、開発を認定しないわけにはいかない。」
 「景観に配慮された計画ならば認定をする。」

と応えたという。

 これが日本だ。これが信濃の国の行政の自然観なのか。環境観なのか。

 ニコルさんが生きていたら、どう言うだろう。どんな動きをするだろう。

 人間の魂にかかわることを重視するか、開発を重視するか。行政も、流され流され、何の痛みも感じなくなっていくのか。

 

 ニコルの次の文章を、もう一度ここに書いておこう。

 

 「私が生まれた家のすぐ近くに、川の流れる小さな緑の谷間があった。 

 川は下流の貯水池に流れ込んでいた。

 谷間の森には大きな古い木がたくさん生えていた。 

 子どもの頃、私はとても体が弱くて、医者から激しい運動をいっさい止められていたほどだった。そんな私を心配した祖母は、あるとき私の耳にそっとささやいたものだ。

 あの谷間に行ってごらん。一人だけで行って、年取った大きな木を見つけるんだよ。できればオークの木がいい。オークの木は魔法の木だからね。

 これだという木を見つけたら、その木に向かって、兄弟になってくれと頼むんだよ。

 その木をしっかり抱きしめて、木が鼓動するのを感じとり、自分の秘密を打ち明けて、かわりにその木の秘密を教えておもらい。

 それがすんだら、てっぺんまで登って、その木の呼吸を吸い込むんだよ。

 そうすれば、木はおまえの兄弟になって、おまえを守り、強い子にしてくれるからね。」