「ひきこもりの国」  <7>

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 「日本人が夜遅くまで働くのは、働く以外の魅力的な選択肢が不足しているからだ。週35時間労働で、年に6週間の休暇を楽しんでいるヨーロッパとは大違いだ。日本のホワイトカラーは、やるべき仕事があってもなくても、たいてい日が沈んでからもずっとデスクにしがみついている。」

 日本人は、「生きること」よりも、「働くこと」を優先するように教育されている。

 アルコール依存症うつ病、自殺、バーンアウト燃え尽き症候群)、これらはみな関連しており、強力な共通の原因が存在する。その原因は日本社会のなかにあるのに、日本人は、その人の個人の問題、責任にしてしまう。その人の努力や能力が足りないのだ、と。

 「『うつをやめれば楽になる』を翻訳出版した水澤医師によれば、うつになる人は、自分のことより、他人に気を遣うあまり、救いの手を拒絶することが多い。

 日本人は、うつ病の克服について話し合うことには消極的だ。それがこの病気と闘うことをさらに困難にしている。」

 だから、ひたすら隠す。隠さないと、偏見によって家族に迷惑がかかると考えてしまう。不名誉なこと、不利になると思ってしまう。

  日本には、アルコール依存症に関する信頼できるデータはほとんどない。

 

 「ひきこもりの国」の出版から、十数年たったが、根本的な政策も改革も、学び合いも進んでいないように思える。

 子どもの健全な発育に必要な、環境、教育、生活の改革はまったく進んでいない。

 自然の中、街の中で、放課後や日曜日に遊び回る子どもの群れは絶えて見られない。相変わらず孤独な子どもの姿がある。

 労働者の超過勤務、ゆとりのなさも、疲弊をもたらし続けている。