北斎の晩年

 

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  今朝の新聞、福岡伸一が「動的平衡」で、「晩年が最盛期だった北斎」について書いている。(朝日)

  北斎の傑作「神奈川沖浪裏」の版画も、「富嶽三十六景」も、北斎が七十歳を過ぎてからの作だった。

 「北斎は少年時代の原点を忘れなかった。研鑽を積みつつも決して自分の技倆に満足することがなかった。いつも灼けるような焦燥感を抱いていた。壮年期を過ぎてから、自らの最盛期を創出した。」

 死の間際、北斎が言った言葉、

 「天 我をして 五年の命を保たしめば 真性の画工となるを得べし。」

 北斎は六歳から絵を描いた。それからずっと絵を描く人生だった。けれど70歳までの絵に大したものはないと自覚していた。後5年 生きるならば、本当の版画をうみだすことができるのだが‥‥と。

 無念の思いを抱いて北斎は89歳でこの世を去った。後5年生きることができたら94歳、もしそれが実現できたら、この最晩年に彼はどんな作品を残しただろう。

 福岡は、最後にこう書いている。

 「我々は、これからこそ何かをなすべきなのであり、どんなことでも始めるのに遅すぎることはない。北斎は、never too late と叫んでいるのだ。」

 福岡の文章に感銘を受けた。

 僕は今、小説を書いている。この4年間はその長編に没頭してきたが、まだ前編の完成を見ない。疲労困憊になる日が多く、長時間の執筆は体力がもたないから半日執筆、半日農作業などをしている。前編を今年中に完成させたい。北斎晩年の年齢に近づいてきた。