田中正造が、こんな言葉を残していることを、赤堀芳和「欲望の世界を超えて やすらぎの国はいずこに」(講談社)で知った。田中正造(1841~1913)
「今日の日本の、日本の惨状に至りたるも、決して一朝にあらず。
正造に言論の自由なきがごとし。
故に略して申さば、種々の亡国に至るの原因はあれども、
国民として国土の天産と自国の長所を捨てて、
一も二も、何もかも、付加随心、
長も短も皆、西洋にかぶれ、
ついに畳の上に泥靴にて駆け上がる滑稽の有り様より災いの入り来たりものにて、
日本の亡国は、我を知らずして、ただ呑噬(どんぜい)を事とする亡国なり。」
晩年の感慨だろう。自然との共生が日本で滅び、いたずらに富国強兵にまい進して侵略国となり、これはもう亡国に至ると、明治の終わりのころに予言していた。
「一も二も、何もかも、付加随心」とは、大勢に逆らわず、従っていく、自己保身や利益を得るために、力を持つものに従っていく、忖度する。右へならえ。
「呑噬(どんぜい)」は、「他国を侵略してその領土を奪うこと」。日清戦争、日露戦争、韓国併合、第一次世界大戦によって領土を広げることに成功した大日本帝国。
その結末が敗戦。帝国崩壊。
そしてその後の日本は如何。未来や如何。