福島の親子とともに、「安曇野ひかりプロジェクト」



 昨日、福島の親子たちは帰っていった。林でたくさんのクワガタやカブトムシをとった。どあい冒険くらぶのハマ隊長は、しみじみと語った。虫もぼくたちも生きている、虫もまた生きたい、福島へ持って帰るのは、虫さんにとってどうなんだろう、ぼくたちも生きているところに住めなくなるのは悲しい。子どもたちは考えた。数匹を持って帰るが、福島の林に放してやろう、残りはここの林に返してあげよう。子どもたちは、空きペットボトルに木のチップを入れ、ボトルの先端を切り取って漏斗にして本体の上にはめこみ、ボトルの口を開けたままにして、虫を入れた。
 キャンプの三日目から、あの炎暑は去り、急転直下寒いほどになった。子どもたちだけでテントに寝る。寝袋に入れば温かい。初めて親から離れて夜を過ごした小学一年生がいた。お兄ちゃんたちと一緒だ。怖くはない。
 小さな子が大きな斧で薪割りした。輪切りの丸太を立てて、真ん中を狙って打ち下ろす。薪割りのコツをおぼえたら、薪割りも楽しい。
 じいちゃんが沸かしてくれたドラムカン風呂に三人が入る。トンボが頭に止まる。黒沢川の上流の滝まで、水のなかを登る。こんな上流にも小魚やエビがいる。サルもやってくる。ハマチャン隊長のヤギが近くで草を食んでいる。
 このプロジェクトも今年で区切りをつけることになっている。完全に終わりにするということでなく、発展的な方途はありやなしや。資金的にも厳しい。社会福祉協議会から共同募金の10万円の補助は受け、フリーマーケットやワークショップ、カンパで資金をつくってきた。
 ハマ隊長手づくりの、大シートを屋根にはりめぐらした広場、野菜用コンテナを裏返して座り、親たちと安曇野ひかりプロジェクトのメンバーとで、今後を話し合った。大震災と原発事故の後、ここに保養でやってきた福島の親子、ひなびた「安曇野地球宿」とロビンソンクルーソーのような「どあい冒険くらぶ」キャンプ場、小さいけれど大きい体験をここで積み重ねてきた。
 親の声は、感謝と信頼、プロジェクトを惜しむ声だった。そこから出てきた声がある。「福島ひかりプロジェクト」をつくれないか、つくりたいものだ。子どもの育つ教育の原点がここにあった。それを福島で継続できないものか。福島の親たちがつくる新たな活動。
 何も決まったものはない。思いがどこまで深まり、どんなものが生まれるだろうか。
 
  キャンプ場で火を燃し、鉄釜で炊いたご飯は、トウモロコシご飯だった。炊きたての釜の鉄ぶたをとったら、ご飯の上にぎっしりトウモロコシが覆っている。トウモロコシの芯も入っている。これはうまかった。収穫したトウモロコシの実の粒をスプーンでそぎ取り、塩少々加えて米と一緒に炊いた、それだけ。それが実にうまかった。ほんのりモロモシの甘さがある。初めて食べたトウモロコシご飯だった。
 我が家でもつくろうと、我が家のモロコシでご飯をつくった。オー、ナイス、おいしい。