世界の自然葬

 東京都の樹林墓地、今年もたいへんな申し込みが殺到したそうだ。樹木の生命の暖かさや自然のなかに還っていく永遠性のゆえに、樹の下に眠りたいという願望も強い。同時に経済的に費用がかからないということや、墓を管理する必要がなくなることも関係している。東京都では、現在の樹林墓地からさらに自分の好きな木を植えたり選んだりして、そこに遺骨を納める樹木葬墓地へと、計画が進められていくようである。
 一方、散骨という方法がある。それは、遺骨を砕いて2ミリ以下にしたものを、水に溶ける紙に包んで海や大地に撒く、別れの儀式をともなって行なわれる自然葬である。
 株式会社ハウスボートクラブを設立して、東京湾を中心にパーティークルーズ事業と海洋散骨のメモリアル事業展開している村田ますみさんが、世界の散骨について書いている。

 <世界の大都市では共通して墓地不足という問題をかかえており、土葬より火葬、墓を建てるより納骨堂、そして散骨という流れになっている。
 中国の上海や大連など沿岸都市では、民生局が海洋散骨をする市民に補助金を出し、名前を刻む記念碑を建立するなど積極的に散骨をすすめている。
 韓国では、2007年の法改正により、散骨や自然葬の推進を「国と自治体の責務」とうたい、積極的に散骨を推進している。ソウル市は、環境に配慮した散骨公園「追憶の森」を設置し、2020年には散骨する人を全体の6割にしようと意気込んでいる。樹木葬墓地の設置も相次いでおり、2009年には、ソウルの東120キロの京畿道揚平郡の国有林に20万人以上の樹木葬林がつくられた。韓国では伝統的に土葬だったが、散骨や樹木葬への政策転換で、わずか10年で大きく変わってきている。
 アメリカでは、いまだ火葬が少なく40パーセントだが、カリフォルニア州では50パーセントを超える。ここでは散骨は免許をもつ業者によって行われ、散骨した場所を届け出なければならない。
 イギリスでは、ほとんどの墓地は満杯状態にある。イギリスは火葬率が高く、70パーセントを超える。地球環境問題への意識が高く、自然に優しい「グリーンフューネラル」、すなわち緑の中に葬る散骨運動が盛んである。散骨を規制する法律はない。原則的にどこに撒いてもよい。> (「お墓に入りたくない! 散骨という選択」村田ますみ 朝日新聞出版)

 村田ますみさんの本を読んで、その意欲的・創造的な活動展開に脱帽する。彼女は、海への散骨という活動をしっかり企業として確立している。彼女の企業では、散骨して終わりにしていない。散骨した海のその場所は正確に記録してある。散骨後の秋と春のお彼岸に、遺族をメモリアルクルーズに招待している。
 東京湾で散骨する。沖縄の海で散骨する。海は世界に通じている。どこで散骨しても、世界の海でお墓参りが出来る。

 ところで、樹木葬自然公園と子どもの森、まだ牛歩の歩みだ。構想は立てても、土地にはそれぞれその所有者がいて、農地は、耕作放棄地であっても簡単に転用は出来ない。山林原野を所有する人、立ち上がってくる人はいないか。呼びかける我が声も弱い。無力を感じる。
 ぼくの提唱は、単なる葬送法の問題ではない。未来を創っていく子どもの育成を目的にした命の森づくり構想なのだ。その森自体が循環の森であり、命を養う森であり、癒しの森であり、子どもたちの学びの場になる。そのような未来企画にこそ、税金を投入してほしい。

インターチェンジの名前を換えて2億1千万円、新庁舎建設して90億円、それが今の行政である。